27 - 28 January 2024 Modern and Contemporary Art

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LOT 061

ピエール=オーギュスト・ルノワール

Tête de jeune fille épluchant un fruit

Detail

1895
油彩、キャンヴァス
右上にサイン「Renoir」
41.0 × 33.0 cm (16⅛ × 13 in.)
額装
この作品は、現在ヴィルデンシュタイン・プラットナー研究所の後援のもとで準備中の、近刊予定のピエール=オーギュスト・ルノワール のデジタルカタログレゾネに掲載される予定

Estimate¥70,000,000 - 100,000,000

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来歴: ギャルリーデュラン・リュエルが作家より購入 (1897年12月31日)
ギャルリーデュラン・リュエル、ニューヨーク (1925年)
ギャルリーデュラン・リュエル、パリ
モーリス・クトー、パリ (1937年12月10日)
プライベート・コレクション、パリ

コンディション:良好です。縁沿いに経年によるわずかな絵具のヒビ割れがあります。縁沿いに貼られたテープが経年により所々小さく剥落しています。人物の目の周り、前頭部、果物上部、左右縁沿いに修復痕があります。

印象派を代表する画家、ピエール=オーギュスト・ルノワール。生涯に描いた油彩画は実に約3,800点におよび、作品数でいえば同時代のモネやセザンヌを優に凌ぐ。その作風からは時代ごとの変化を捉えることができ、初期の段階では印象派の鮮やかな色彩に触発された作品が多い。

「1883年頃、私の仕事に裂け目のようなものが生じたのです。私は印象主義の袋小路にはまってしまい、もはや、どうやって描くのかがわからなくなったのだ、という結論に至りました。要するに私にとって印象派は行き止まりだったのです」[1]と語るように、ルノワールは印象派の様式、特に筆触分割の手法に限界を感じ、その後は独自表現の模索へと歩みを進めてゆく。

本作は、その後約10年にもわたる試行錯誤の時を経た1895年の作品で、ルノワール特有の鮮やかな色彩と柔らかな筆遣いで描かれている少女の肖像画である。少女の体が背後に溶け込まずしっかりと形態を保っているのは、模索の時に明瞭な線で対象を描く古典主義の描き方を追求し獲得した感覚と、印象派の影響を受けた色彩表現の見事な融合と言える。少女が果物の皮を剥く手つきはゆったりと動いているかのようで、その滑らかな肌は彼女の体温さえも感じさせる。

喜びに満ちた情景、女性の官能性、風景などを描いたルノワールは、鮮やかな色彩、なめらかな筆触、美しい光の表現が高く評価され、その作品は現在もなお多くのコレクターによって収集され、世界の主要な美術館に収蔵されている。ルノワールやモネらが参加した1874年の第1回印象派展から今年で150年。印象派の画家たちが後世の美術史に与えた影響の大きさは計り知れない。



[1] 賀川恭子『ルノワール―光と色彩の画家』角川文庫、2010年
 

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