LOT 055
ドナルド・ジャッド
Untitled (Schellmann-Jitta 298 - 301)
LOT 055
Untitled (Schellmann-Jitta 298 - 301)
来歴: David Zwirner、ニューヨーク
フィリップス、ニューヨーク「Evening & Day Editions」2019年10月25日、Lot. 48
現所有者が上記より入手
文献: 「DONALD JUDD PRINTS AND WORKS IN EDITIONS」Edition Schellmann、1996年、P. 128 - 129、No. 298 - 301
コンディション:各作品良好です。 [Black] 経年による軽いヤケがあります。 [Yellow] 裏面上部2か所がテープで台紙に貼付されています。絵具の描画面が内側で木版画と接触しているため、作品保護の観点からシート状態での検品はしていません。 [Ultramarine Blue] 裏面上部2か所がテープで台紙に貼付されています。絵具の描画面が内側で木版画と接触しているため、作品保護の観点からシート状態での検品はしていません。 [Orange] 経年による軽いヤケがあります。裏面上部2か所がテープで台紙に貼付されてるため、裏面全体の確認はできていません。
現在では彫刻家として広く知られるドナルド・ジャッド(1928-1994)だが、立体作品が発表される10年以上前、キャリア初期の1951年には既にニューヨークの「The Art Students League」(1948-53年まで在籍)で最初の版画作品を制作している。以後40年以上にわたり、絵画や立体作品と同様に版画制作においても「形」と「色」の研究を追求した。
1950年代初期、ジャッドは宿の一室や川辺の景色といった具象的なモチーフを中心にモノクロのリトグラフを制作していたが、1953年以降は木版画を主な印刷媒体とした。1950年代中頃から1961年にかけて、作品のモチーフは具象表現から抽象的で幾何学的なものへと変化を遂げ、1961年から1980年代中頃の作品では、色は黒、赤、青のみに限定され、形状は平行四辺形が中心となった。
1986年以降、ジャッドの関心は平行四辺形から長方形へと移り、60×80cmの長方形のシート上で、色の「反転」(一つのシートでは一色が中央に配置され、別のシートで同色が縁に置かれる)や垂直・水平の線による画面の「分割」を行い(fig. 1)、多数の版画シリーズを制作した。最晩年である1990年代に入ると使用される色の種類はますます増えるとともに、色の「反転」や線による画面の「分割」は複雑さを増し(fig. 1)、一連の完成度を帯びたシリーズへと収束していった。その終着点としてあるのが今回出品される《Untitled (Schellmann-Jitta 298 - 301)》である。
カタログレゾネ『Donald Judd: Prints and Works in Editions』に掲載される最後の作品である本作には、これまでにないジャッドの新しい取り組みが見て取れる。1961年以降の版画作品で繰り返し行われた色の「反転」は採用されず、中央の印刷されていない和紙の領域を、異なる色が囲む構図は本作が初めてである。亜鉛メッキ鉄製フレームのガラス上に油彩のストライプを施して画面の「分割」を試みた唯一の作品でもあり(fig. 2)、最晩年の作品にしてジャッドの研究の果て、はたまた新しい研究の始まりを予感させる。
* 以下を参照。
Jörg Schellmann and Mariette Josephus Jitta (eds.), Donald Judd: Prints and Works in Editions, Munich and New York. Edition Schellmann, 2nd revised and updated edition, 1996.