今回のオークションには、奈良美智の《The Little Thinker (No. YNF5386)》が登場します。奈良の作品は、少女像が特徴的ですが、本作では少女が思索にふけるような表情を浮かべつつ、穏やかな微笑みをたたえている点が印象的です。幼少期の記憶や感情を想起させるような奈良の作品は、国内外で高い評価を得ており、本作もまた必見の一作です。
また、今回登場する草間彌生の《かぼちゃ》は、白黒のモノトーンで描かれたアクリルのキャンヴァス作品で、本オークションのトップロット(当該セールの中で最も高い落札予想価格(エスティメート)が設定されたロット)となります。一方、韓国と日本の戦後美術を代表するアーティストの一人、李禹煥の《With Winds》は、昨年10月のオークションでも登場した作家の代表的なシリーズの一つです。本作はF30 号の横型作品となり、限られた色調ながら、力強い筆致が印象的な一作です。
また、今回のオークションは写真作品も充実しており、そのなかでも注目はアンドレアス・グルスキーの《Em Arena II, Amsterdam》です。まるで絵画のように壮大でありながら細部まで綿密に計算された構図が、圧倒的なインパクトを与えます。このほか、リチャード・アヴェドンの《Nastassja Kinski and the Serpent, Los Angeles, California, June 14》も出品されます。
人気の高い作家の作品としては、加藤泉の彫刻作品が登場。葉のシルエットや生命の原点を思わせるフォルムが特徴的で、観る者に原始的なエネルギーを感じさせます。そのほか、ロッカクアヤコの《Untitled》は、作家の代表的な少女のモチーフを、赤を基調とした背景に描いた作品で、華やかな色彩のなかに神妙な表情を浮かべる少女は、人々の興味を誘います。さらに、日本画の伝統を現代に昇華させた千住博の《ウォーターフォール》も注目作品の一つです。滝の流れの描写を通じて感じる水の動き「動」と、画面全体を覆うような静けさ「静」が美しさを織りなします。ストリートアートから現代アートへと作品を昇華させたジャン・ミッシェル・バスキアの《Cabeza, from Portfolio II》。見開かれた目、長く伸ばして描かれたような首や他に比べ細かく描かれた口元などを持つ画面中央に描かれた人物像は、作家特有のビビットな色使いを背に、抽象的でありながらも人々の注目を惹きつけます。