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EVENT - 2024.06.28

この夏、東京で訪れるべきアートスポット8選 -2024年夏-

今年の夏、6月から8月にかけて、東京や東京近辺で行われる美術展やアートイベントなど、注目の8スポットを紹介いたします。

現在開催中のイベントの中で注目の展覧会は、作家による造語「アフロ民藝」に象徴される、日本文化と黒人文化を融合させた展示「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」、この9月に東京にオープンするPaceギャラリーと麻布台ヒルズ ギャラリーの共催「カルダー:そよぐ、感じる、日本」展や、今年の6月にオープンしたばかりの現代美術館UESHIMA MUSEUMの「オープニング展」などが挙げられます。

会期終了間近の「サエボーグ『I WAS MADE FOR LOVING YOU』/津田道子『Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる』Tokyo Contemporary Art Award受賞記念展」に続き、7月初週には、世界中から70の現代アートギャラリーが参加する「Tokyo Gendai」がパシフィコ横浜で行われ、SBIアートオークションによる土日開催のオークションやアート×日本酒イベント「Thursday Lates Powered by SAKEJUMP」も行われます。

アートイベントは7月末以降も目白押しで、アーティゾン美術館では空間と美術品の関係に着目した「空間と作品」展、日本有数の現代アートコレクションである高橋龍太郎コレクションをもとに構成された「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」が開催されます。

この夏をアートと共に過ごすのはいかがでしょうか。あなたのお気に入りのアーティストや作品と出会えるかもしれません。この機会をお見逃しなく!

1. 明日にも行ける展覧会(6月)

● 森美術館「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」(2024/04/24 – 09/01)
森美術館「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」
展示風景:「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」森美術館(東京)2024年
撮影:来田 猛
画像提供:森美術館


六本木にある森美術館では、現在「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」(2024年4月24日(火)-9月1日(日))が開催中です。シアスター・ゲイツは、アメリカのシカゴを拠点に、彫刻と陶芸作品を中心に様々な分野での芸術活動を行い、国際的にも高く評価されているアーティストです。2004年に愛知県常滑市で陶芸を学ぶために来日して以降、20年以上にわたり日本文化の影響を受けてきたゲイツは、アーティストとして文化的ハイブリディティ(混合性)を探求し続けてきた背景もあり、アメリカの公民権運動(1954年-1968年)の一翼を担ったスローガン「Black is Beautiful」と日本の「民藝運動」の哲学を融合した、独自の美学を表す「アフロ民藝」という言葉を生み出しました。

「アフロ民藝」は、黒人の美学と日本の工芸の哲学という二つの異なる文化を融合させた美学のマニフェストです。この言葉のもと、ゲイツが常滑で制作した黒い陶器、江戸後期の歌人大田垣蓮月に影響を受けた作品や日本各地の作り手たちとコラボレーションしたプロジェクトが展開されています。

今回の展覧会は、黒人アーティストによる国内最大規模の個展であり、黒人史、そしてゲイツが想い描く未来を反映させています。近年の「Black Lives Matter (BLM)」運動を含む、これまでの黒人差別や植民地主義へ対抗してきた歴史、そして彼らの文化の重要性や意義を示しており、展示室の壁を数千冊の関連書で埋め尽くす「ブラック・ライブラリー」や会場内での音楽パフォーマンスなど、様々な切り口から芸術、文化、歴史を感じられる展覧会となっております。

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● 麻布台ヒルズ ギャラリー「カルダー:そよぐ、感じる、日本」(2024/05/30-09/06)
	麻布台ヒルズギャラリー/ペース・ギャラリー東京「カルダー:そよぐ、感じる、日本」
左画像:Installation view of Calder: Un effet du japonais, Azabudai Hills Gallery, 2024 Photo: Tadayuki Minamoto
All works by Alexander Calder
All photos courtesy of Calder Foundation, New York / Art Resource, New York
© 2024 Calder Foundation, New York / Artists Rights Society (ARS), New York


麻布台ヒルズ ギャラリー(麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階)では、Paceギャラリーとの共催展示「カルダー:そよぐ、感じる、日本」(5月30日(木)-9月6日(金))が開催中です。アレクサンダー・カルダー(1898-1976)は、20世紀を代表する芸術家の一人で、空間に吊るされた抽象的な彫刻がバランスを保ちながら変化し続ける動く彫刻、「モビール」の発明で知られています。

展覧会は1920年代-70年代までの約100作品で構成されており、代表作であるモビールシリーズだけでなく、彼の油彩画やドローイングなど幅広い作品群が展示されています。多岐にわたる作品群だけでなく、今回の展示スペースも注目すべきポイントの一つと言えます。長年のカルダー財団の協力者である建築家の後藤ステファニーが、3:4:5の直角三角形の幾何学に基づいた設計を行いました。茶室や能舞台を連想させるような正方形の展示室も存在し、日本建築の要素や素材を点在させることで、カルダーの作品と日本文化が共鳴しています。

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● UESHIMA MUSEUM「オープニング展」(2024/06/01-12月末)
UESHIMA MUSEUM「オープニング展」
右画像:UESHIMA MUSEUM 外観
左画像:UESHIMA MUSEUM 室内展示風景


2024年6月1日に開館したばかりの美術館、UESHIMA MUSEUMでは、「同時代性」をテーマに集められた、国内外の多様なアーティストによる現代アート作品650点を超えるUESHIMA MUSEUM COLLECTIONから、様々なテーマに合わせて選び抜かれた作品が展示されています。現在美術館の開館を記念し「オープニング展」(2024/06/01-12月末)が開催中です。

展覧会では、5つのテーマをもとに選出された作品群が展示されています。「海外における抽象―その開拓精神」、「同時代の表現、個の表現世界」、「女性画家のまなざし」、「変わるもの、消えゆくもの」、「松本陽子の絵画」となっております。スペースによって異なるテーマ性を捉えた空間は、部屋に足を踏み入れた瞬間に鑑賞者を新たな世界に引き込みます。

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2. 今しか見られない、7月初めまでの美術展&イベント

● サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」/津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展(2024/03/30-07/07)
サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」/津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展
左上画像:サエボーグ《I WAS MADE FOR LOVING YOU》 2023-2024、インスタレーション/撮影:髙橋健治/画像提供:トーキョーアーツアンドスペース
左下画像:津田道子《カメラさん、こんにちは》 2024、映像、撮影セット、ソフトウェア/撮影:髙橋健治/画像提供:トーキョーアーツアンドスペース 


東京都とトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)が2018年より実施している現代美術の賞「Tokyo Contemporary Art Award 」(TCAA)は、中堅アーティストを対象とし、受賞者の更なる飛躍を目指し、数年にわたり継続的な支援を行っています。第4回TCAAの受賞者による「サエボーグ『I WAS MADE FOR LOVING YOU』/津田道子『Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる』Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展」(2024年3月30日(土)-7月7日(日))が東京都現代美術館にて開催されています。

制作への関心やアプローチが大きく異なる二人が織りなす展示は、「身体性」や「ケア」について問いかけています。サエボーグは、これまで人間と動物性の関係性というテーマを作品の軸として活動を行ってきました。今回の展示では、「ケア」に着目し、弱った愛玩動物「サエドッグ」をはじめ、鑑賞者自身の「弱さ」や「力」に触れるような作品が展示され、会期中に行われているパフォーマンスでは、作品の一部に鑑賞者を取り込んでしまうような仕掛けとなっています。一方で、津田は近年特に関心を寄せている「身体性」について追求しています。作家自身と家族が、初めてビデオカメラで撮影を行った経験に着想を得て制作された新作は、多くの鑑賞者が経験したことがあるような日常的な内容を再演することで、鑑賞者が自身を客観視させるような構図を生み出しています。

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● Tokyo Gendai (2024/07/05-07/07)
Tokyo Gendai
Tokyo Gendai, 2023


昨年成功のうちに終了した「Tokyo Gendai」が今年もパシフィコ横浜にて、2024年7月5日(金)-7日(日)に開催されます。国内のみならず、世界中の18か国から70ものギャラリーが集結する日本の現代アートフェアです。

国際的に評価されている現代アートを取扱う世界有数のギャラリーであるPace ギャラリー、BLUM、Sadie Cole HQやPerrotinなどが出展予定です。国内外の著名なアーティストや新進気鋭の若手アーティストたちの作品が一挙に展示される祭典に訪れてみてはいかがでしょうか。

また、今回は国籍や世代の異なる女性アーティスト4人による、社会的課題にスポットを当てた展示「Tsubomi」も開催されます。そのほかにも巨大インスタレーション「Sato」やアートトーク、出展アーティストによる子供向けワークショップなど、イベントも目白押しです。

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● SBIアートオークション「Thursday Lates Powered by SAKEJUMP」& 「第66回SBIアートオークション | MODERN AND CONTEMPORAY」(2024/07/03-07/07)
SBIアートオークション「Thursday Lates Powered by SAKEJUMP」& 「第66回SBIアートオークション | MODERN AND CONTEMPORAY」(
Courtesy of SBI Art Auction


SBIアートオークションは、7月6日(土)、7日(日)に行われる「第66回SBIアートオークション|MODERN AND CONTEMPORARY ART」に先駆け、7月4日(木)に「Thursday Lates Powered by SAKEJUMP」を代官山ヒルサイドフォーラムにて開催いたします。

「アート×日本酒」という切り口から、「SAKEJUMP - 若手醸造家の祭典『若手の夜明け』- 」などを主催するcamo社のご協力のもと、新進気鋭の醸造家による美味しい日本酒をお楽しみいただきながら、オークションに出品される近現代アート作品も鑑賞いただける、スペシャルコラボレーション企画となります。当日は下見会の開場時間が延長され、イベント時間は18:00-20:00となります。

SAKEJUMPは、美味しい日本酒とその文化、とりわけ若手醸造家の意欲的な活動や思いを世界に発信していく役割を担っており、巨匠から若手のアーティスト作品を取り扱い、日本のコンテンポラリーアート及びマーケットの活性化に取り組むSBIアートオークションと業種は違えど、近しい想いを共有していることからイベントが企画されました。本イベントでは、7月セールに出品予定のアーティストの出身地に因み、東北から九州まで、全国津々浦々の新進気鋭の酒蔵による日本酒計12種類が提供されます。

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3. 7月後半から始まる注目の展覧会

● アーティゾン美術館「空間と作品」(2024/07/27-10/14)
アーティゾン美術館「空間と作品-空間が見てきた景色をさぐる-」
アンリ・マティス《画室の裸婦》1899 年
石橋財団アーティゾン美術館


東京駅から徒歩5分のところに位置するアーティゾン美術館では、2024年7月27日(土)より「空間と作品」が開催されます。

本展のテーマは、美術品が在ったその時々の場を想像し、体感してみることです。美術館に展示されている美術品は、誰もが美術館へ行けば鑑賞ができる公共性があり、個人的な空間とは縁遠いもの認識されがちです。しかし、美術品が美術館に辿り着く前、美術品が生まれた時は、邸宅の建具として、個人の部屋の装飾としてなど、よりプライベートな空間に展示されることもありました。何人もの手を渡り、受け継がれてきたものもあります。

「空間と作品」展では、モネ、セザンヌ、藤田嗣治、岸田劉生、琳派による作品や抽象絵画まで、石橋財団コレクション約130点で構成されています。美術品がどのような背景で誕生し、様々な人の手に渡り、どのような扱いをされてきたのか、これまでの軌跡を想像し、体感し、その歴史に想いを馳せてはいかがでしょうか。

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● 東京都現代美術館「日本現代美術私館:高橋龍太郎コレクション」 (2024/08/03 – 11/10)
東京都現代美術館「日本現代美術私館:高橋龍太郎コレクション」
奈良美智《Untitled》1999年、240×276㎝
© NARA Yoshitomo, courtesy of Yoshitomo Nara Foundation


東京都現代美術館にて2024年8月3日(土)より、「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」展が開催されます。今日3,500点を超える作品を有し、質・量ともに日本の現代美術の重要な存在となっている高橋龍太郎コレクションに関する展覧会です。

今回の展示が手掛かりとするのは、高橋氏の視点です。戦後、団塊世代の先駆けとして育った彼は、全共闘運動に参加し、文化と政治が交差する1960年代の東京の空気を色濃く吸い込んだ後、精神科医としての活動に尽力するなど多様な経験を重ねてきました。1990年代半ばより、現代美術品の蒐集を始めた高橋氏は、約30年にわたり現代美術の動向を受け手として内側から感じ、表現者とは異なるかたちで、その重要な部分を体現してきたと言えます。また、同氏のコレクションは、1990年代から2000年代にかけての日本の自画像のような作品群だけでなく東日本大震災以降の時代の変化にも共鳴しており、今回の展示では近年の新しいコレクションの流れも示しています。

1990年代にコレクションを始めた高橋氏と同時代の1995年に開館した東京都現代美術館。東京という同じ土地で形成された東京都現代美術館の公的なコレクションに対し、高橋氏の私観のもとに集められたコレクションが存在し、二つのコレクションは補完関係にあるといえるでしょう。美術史の流れにひとつの「私観」を導入しつつ、批評精神にあふれる日本の現代美術の重要作品を総覧する貴重な機会を体感するのはいかがでしょうか。

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