PRESS - 2024.09.26
この秋、東京で訪れるべきアートスポット7選 -2024年秋-
秋が訪れ、紅葉も始まるこの季節の東京で、アートに触れてみるのはいかがでしょうか。夏に続き、国内外から多彩なアーティストたちの作品が集まり、感性を揺さぶる展覧会やイベントが盛りだくさんとなっております。この時期にぜひ訪れたいアートスポットをいくつかご紹介します。
まず、森美術館では、六本木ヒルズを象徴する蜘蛛をモチーフとした大型彫刻作品《ママン》を制作したルイーズ・ブルジョワの個展「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」が開催され、21_21 DESIGN SIGHTの企画展「ゴミうんち展」では、人々の身近な廃棄物、排泄物に改めて向き合い、ゴミうんちという新しい概念をきっかけに世界の循環についての探究が行われます。さらに、今年で13回目を迎える「六本木アートナイト」は、近隣の美術館なども含め、街全体をアートの舞台に変え、幻想的な体験を提供します。続いて、東京国立近代美術館では「ハニワと土偶の近代」展が開催され、出土遺物への美的価値の発見から現代への影響を考察します。東京オペラシティアートギャラリーでは、戦後の「具体」活動を経て、舞台を移し、パリ、そして世界で活躍し続ける松谷武判の作品200点以上を集めた大規模個展「松谷武判 Takesada Matsutani」が開催されます。東京都写真美術館では、マグナム・フォトの正会員でもあるアレック・ソスの個展で、「部屋」をテーマにした、約60点の作品を紹介する「アレックス・ソス 部屋についての部屋」展が開催され、こちらも注目です。
美術展やアートイベントとは、また違う独特の臨場感を味わいたい方は、近現代アートを取り扱う国内最大規模のオークションハウスであるSBIアートオークションの「第68回SBI アートオークション|MODERN AND CONTEMPORARY ART」をご覧になるのはいかがでしょうか。
1. 森美術館「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」(2024年9月25日-2025年1月19日)
右上画像:ルイーズ・ブルジョワ《カップル》2003年/撮影:Christopher Burke
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York
右下画像:ルイーズ・ブルジョワ《父の破壊》、1974年/所蔵:グレンストーン美術館(米国メリーランド州ポトマック)/撮影:Ron Amstutz
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York
2024年9月25日(水)から森美術館では「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」が開催されます。六本木ヒルズの代名詞とも言われる《ママン》の制作者として国内でも名高いブルジョワは、国際的に見ても20世紀を代表するアーティストの一人です。70年以上にわたるキャリアのなかで、その表現方法は留まることを知らず、インスタレーション、絵画、彫刻など多様な作品を残してきました。
幼少期の経験は、彼女にとってインスピレーションの源であり、内面の葛藤やトラウマを表現した作品は、その世界観で観る者を深く魅了します。セクシュアリティやジェンダーについても題材として多く取り上げていた彼女の作品は、フェミニズムの文脈でも語られることが多いと言えます。本展では、1998年以降に制作された日本初公開の作品や、アジア初公開となる約10点を含む初期絵画作品など、彼女の人生と芸術の変遷を辿ることができます。
日本では27年ぶりとなり、約100点の作品を含む国内最大規模となるブルジョワの個展をお見逃しなく。
2. 21_21 DESIGN SIGHT 企画展「ゴミうんち展」(2024年9月27日-2025年2月16日)
中央画像: マイク・ケリー「Life Cycles」
右画像: 松井利夫 「サイネンショー」/撮影:白石和弘
世界的な共通問題として掲げられている環境問題について、人間の生活に身近な廃棄物や排泄物の角度から「循環」をテーマに向き合う、「ゴミうんち展」が2024年9月27日(金)より21_21 DESIGN SIGHTにて開催されます。ほんの少し前まで生活の一部であった廃棄物や数秒前まで身体の一部であった排泄物が、生活や身体から離れた瞬間から消えゆくものかのように扱われているのが多くの人にとっての日常かもしれません。いわゆる自然界においてはそれらのゴミやうんちという概念が存在せず常に形を変え循環しています。一方で、人間界においてこれらの廃棄物や排泄物は、どこか見たくないものとして扱われ、その循環性については大きな社会問題として考えられてきました。展覧会ディレクターである竹内氏は、「この星の歴史は、生命による地球OSのアップデートの歴史だ。」と語ります。生命体の種類やそれぞれが持つ機能や性質により、世界は分解や生成を重ねながら地球OSを更新し続けてきました。人間は地球OSを更新できる唯一の存在でないものの、環境問題や社会問題を認識しながら現在進行形で起こっているOSの改変を捉え、自由に変える力を持ちます。このような力を持つ我々が自然の摂理を念頭におきながら、世界の循環に向き合う実験の場ともいえる本展をぜひお楽しみください。
3. 六本木アートナイト 2024(2024年9月27日-29日)
右上画像: メイメージダンス《沈黙の島―新たなる楽園―》2022 年/撮影:リュウ・チェンシャン(劉振祥)
右下画像:髙橋匡太《花のロンド》2018 年/撮影:村上美都
今年で13回目を迎える六本木アートナイトは、2024年9月27日(金)から3日間開催されます。今年は「都市とアートとミライのお祭り」をテーマに、美術館だけでなく六本木の街全体を取り込み、社会に於けるアートの可能性を発信します。また、今回から新たなプログラムとして、「RAN Picks」と「RAN Focus」を新設しました。前者は六本木アートナイトが注目するアーティストたちによる展示プログラム、後者は、特定の国や地域に着目するプログラムで、今年は台湾のアーティストがフォーカスされます。開催期間中には、六本木の各エリアでは、アーティストたちによる、パレード、パフォーマンス、インスタレーションや長期展示プログラムなど、イベントが目白押しとなっております。
夏の暑さも落ち着いてくるこの9月の終わりに、アートを楽しむ夜のお散歩に出かけてみるのはいかがでしょうか。
4. 東京国立近代美術館「ハニワと土偶の近代」(2024年10月1日-12月22日)
右上画像:岡本太郎《犬の植木鉢》、1954年、滋賀県立陶芸の森陶芸館
右下画像:斎藤清《埴輪》、1953年、福島県立美術館/©Hisako Watanabe
出土遺物をテーマにした美術展、「ハニワと土偶の近代」展が2024年10月1日(火)より東京国立近代美術館にて開催されます。縄文時代の「土偶」、古墳時代の「ハニワ」と時代が錯誤しているこの展示タイトルに一見違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。実際にハニワや土偶などを展観するのではなく、近代以降の美術作品にモチーフとして登場する出土遺物のイメージを扱うものです。明治から現代まで、出土遺物に注がれた美的なまなざしを順に追っていくと、ハニワブームが先、その後に縄文ブームがやってくるという現象がみられることから、このような逆転したタイトルになっているようです。全4章で構成される展示では、明治時代前期の「好古家」と呼ばれる人たちの活躍までさかのぼり、昭和戦中期のハニワブーム、戦後の岡本太郎やイサム・ノグチといったアーティストによる出土遺物への再注目を検証し、「日本的なるもの」や「伝統」への探究が盛んに行われた時代のなかで「土」が持った意味や影響にも言及していきます。最後の章では締めくくりとして、1970年代以降、ハニワや土偶のイメージが大衆文化に波及する様を捉え、今日への繋がりを示します。
出土遺物と近代への繋がりを細かに追っていくこの展示は、自身の生活の意外な部分への繋がりを気づかせてくれるのかもしれません。
5. 東京オペラシティアートギャラリー「松谷武判 Takesada Matsutani」(2024年10月3日-12月17日)
右画像:パリ、バスティーユのアトリエにて制作中の松谷武判 2019 Photo: Michel Lunardelli
戦後を代表する美術運動の一つである「具体」での活動を経て、その後パリに渡り、世界を舞台に活躍し続ける松谷武判の作品200点以上が揃う大規模個展が東京オペラシティアートギャラリーにて「松谷武判 Takesada Matsutani」展が2024年10月3日(木)より開催されます。具体作家の第2世代として、当時の新素材であったビニール系接着剤(ボンド)を用いた作品は有機的なフォルムを纏ったレリーフ状の作品を生み出しました。それに続くパリ時代初期の作品としては、松谷が世界中のアーティストが集る版画工房「アトリエ17」に入門し、自身の制作活動を根底で導くモチーフに出会った頃の作品が出てきます。その他にも、制作活動のなかでも重要なポイントとなった、松谷の作品イメージとしても知られているであろう「黒」の世界が生まれるきっかけである、紙と鉛筆を使用し、制作行為の原点に戻りながら生み出した作品群も展示されます。その他、今まで公に出てこなかった希少な作品や未発表スケッチブックに描かれた日々のドローイング等、アーティストの制作背景を垣間見せるような展示となっております。
現在も活動を続ける日本の代表作家の一人である松谷の60年を超える制作活動の軌跡を一挙に見ることのできるこの貴重な機会をお見逃しなく。
6. 東京都写真美術館「アレック・ソス 部屋についての部屋」(2024年10月10日-2025年1月19日)
左画像:アレック・ソス《Anna, Kentfield, California》〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉より、 2017 年/東京都写真美術館蔵/ⓒAlec Soth
右上画像:アレック・ソス《Bil, Sandusky, Ohio》〈Songbook〉より、 2012 年/東京都写真美術館蔵/ⓒAlec Soth
右下画像:アレック・ソス《Still LifeⅡ》〈Advice for Young Artists〉より、2024 年/作家蔵/ⓒAlec Soth
国際的な写真家集団マグナム・フォトの正会員であるアレック・ソスの個展「アレック・ソス 部屋についての部屋」展が2024年10月10日(木)から東京都写真美術館にて開催されます。初期を代表するシリーズから最新作までの約60点を含むこの展覧会では、「部屋」をテーマに彼のこれまでの作品を編み直していきます。初期から彼はアメリカ国内を車で旅し、風景や出会った人々を大判カメラで撮影してきましたが、出品作品シリーズのひとつ《I Know How Furiously Your Heart is Beating》ではそうしたロードトリップのスタイルではなく、世界各地の様々な人々を訪ね、その人々が過ごす部屋でのポートレートや持ち物を撮影しています。彼の作品を「部屋」というテーマで読み解く展示は、初めての試みとなります。
作家自身が親しみを強く感じると語る室内での写真から、その空間に佇む人々に意識を向け、何が見えるのか、ぜひ体感してみてはいかがでしょうか。
7. SBIアートオークション「第68回SBIアートオークション|MODERN AND CONTEMPORARY ART」下見会&オークション(2024年10月23日-10月26日)
Courtesy of SBI Art Auction
SBIアートオークションは、2024年10月25日(金)、26日(土)に、代官山ヒルサイドフォーラムにて「第68回SBIアートオークション|MODERN ART CONTEMPORARY ART」を午後13時より開催いたします。2024年10月23日(水)からは同会場での下見会も開催されます。2024年最後のオークションとなり、10月初めに韓国・ソウルでの海外巡回下見会も開催される今回のセールでは、世代やジャンルを超え、アートマーケットの重層性を垣間見せる豊富な作品が揃いました。時代を牽引するアーティストとして国際的な人気を誇る草間彌生の人気シリーズのかぼちゃのキャンヴァス作品群に加え、彼女の作品の象徴的なモチーフである網を描いた《Infinity Nets》(1999年)も登場いたします。その一方で、麻布の裏面から油絵具を裏ごすことで新たな質感を生み出す「接合」シリーズにより物質性を追求した韓国の単色画運動を代表する作家・河鍾賢(ハ・ジョンヒョン)の長辺2m以上の超大型作品《接合 91 – 23/CONJUNCTION 91 – 23》が圧倒的な存在感を放ちます。7月セールでの緊張感ある入札競争が記憶に新しいもの派の関根伸夫の作品《空の台座》は、東京都庁ふれあいモールのパブリックアートとしても知られている同名の彫刻作品と同じモチーフを利用しています。そのほか欧米からは、ストリート、グラフィティ文化を起点に活動を始め、アメリカの抽象表現主義の流れを継承しているアーティストであるホセ・パルラや、多様なメディウムを使用し、アメリカの歴史、文学、社会などをテーマに制作、活動を進めているグレン・ライゴンなどのほか、ポップアートを代表するアンディ・ウォーホルのこれまた象徴ともいえる《Marilyn Monroe (F. & S. Ⅱ.26) 》は、淡い色彩にビビッドなピンクが彩りを放ちます。
まず、森美術館では、六本木ヒルズを象徴する蜘蛛をモチーフとした大型彫刻作品《ママン》を制作したルイーズ・ブルジョワの個展「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」が開催され、21_21 DESIGN SIGHTの企画展「ゴミうんち展」では、人々の身近な廃棄物、排泄物に改めて向き合い、ゴミうんちという新しい概念をきっかけに世界の循環についての探究が行われます。さらに、今年で13回目を迎える「六本木アートナイト」は、近隣の美術館なども含め、街全体をアートの舞台に変え、幻想的な体験を提供します。続いて、東京国立近代美術館では「ハニワと土偶の近代」展が開催され、出土遺物への美的価値の発見から現代への影響を考察します。東京オペラシティアートギャラリーでは、戦後の「具体」活動を経て、舞台を移し、パリ、そして世界で活躍し続ける松谷武判の作品200点以上を集めた大規模個展「松谷武判 Takesada Matsutani」が開催されます。東京都写真美術館では、マグナム・フォトの正会員でもあるアレック・ソスの個展で、「部屋」をテーマにした、約60点の作品を紹介する「アレックス・ソス 部屋についての部屋」展が開催され、こちらも注目です。
美術展やアートイベントとは、また違う独特の臨場感を味わいたい方は、近現代アートを取り扱う国内最大規模のオークションハウスであるSBIアートオークションの「第68回SBI アートオークション|MODERN AND CONTEMPORARY ART」をご覧になるのはいかがでしょうか。
1. 森美術館「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」(2024年9月25日-2025年1月19日)
右上画像:ルイーズ・ブルジョワ《カップル》2003年/撮影:Christopher Burke
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York
右下画像:ルイーズ・ブルジョワ《父の破壊》、1974年/所蔵:グレンストーン美術館(米国メリーランド州ポトマック)/撮影:Ron Amstutz
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York
2024年9月25日(水)から森美術館では「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」が開催されます。六本木ヒルズの代名詞とも言われる《ママン》の制作者として国内でも名高いブルジョワは、国際的に見ても20世紀を代表するアーティストの一人です。70年以上にわたるキャリアのなかで、その表現方法は留まることを知らず、インスタレーション、絵画、彫刻など多様な作品を残してきました。
幼少期の経験は、彼女にとってインスピレーションの源であり、内面の葛藤やトラウマを表現した作品は、その世界観で観る者を深く魅了します。セクシュアリティやジェンダーについても題材として多く取り上げていた彼女の作品は、フェミニズムの文脈でも語られることが多いと言えます。本展では、1998年以降に制作された日本初公開の作品や、アジア初公開となる約10点を含む初期絵画作品など、彼女の人生と芸術の変遷を辿ることができます。
日本では27年ぶりとなり、約100点の作品を含む国内最大規模となるブルジョワの個展をお見逃しなく。
2. 21_21 DESIGN SIGHT 企画展「ゴミうんち展」(2024年9月27日-2025年2月16日)
中央画像: マイク・ケリー「Life Cycles」
右画像: 松井利夫 「サイネンショー」/撮影:白石和弘
世界的な共通問題として掲げられている環境問題について、人間の生活に身近な廃棄物や排泄物の角度から「循環」をテーマに向き合う、「ゴミうんち展」が2024年9月27日(金)より21_21 DESIGN SIGHTにて開催されます。ほんの少し前まで生活の一部であった廃棄物や数秒前まで身体の一部であった排泄物が、生活や身体から離れた瞬間から消えゆくものかのように扱われているのが多くの人にとっての日常かもしれません。いわゆる自然界においてはそれらのゴミやうんちという概念が存在せず常に形を変え循環しています。一方で、人間界においてこれらの廃棄物や排泄物は、どこか見たくないものとして扱われ、その循環性については大きな社会問題として考えられてきました。展覧会ディレクターである竹内氏は、「この星の歴史は、生命による地球OSのアップデートの歴史だ。」と語ります。生命体の種類やそれぞれが持つ機能や性質により、世界は分解や生成を重ねながら地球OSを更新し続けてきました。人間は地球OSを更新できる唯一の存在でないものの、環境問題や社会問題を認識しながら現在進行形で起こっているOSの改変を捉え、自由に変える力を持ちます。このような力を持つ我々が自然の摂理を念頭におきながら、世界の循環に向き合う実験の場ともいえる本展をぜひお楽しみください。
3. 六本木アートナイト 2024(2024年9月27日-29日)
右上画像: メイメージダンス《沈黙の島―新たなる楽園―》2022 年/撮影:リュウ・チェンシャン(劉振祥)
右下画像:髙橋匡太《花のロンド》2018 年/撮影:村上美都
今年で13回目を迎える六本木アートナイトは、2024年9月27日(金)から3日間開催されます。今年は「都市とアートとミライのお祭り」をテーマに、美術館だけでなく六本木の街全体を取り込み、社会に於けるアートの可能性を発信します。また、今回から新たなプログラムとして、「RAN Picks」と「RAN Focus」を新設しました。前者は六本木アートナイトが注目するアーティストたちによる展示プログラム、後者は、特定の国や地域に着目するプログラムで、今年は台湾のアーティストがフォーカスされます。開催期間中には、六本木の各エリアでは、アーティストたちによる、パレード、パフォーマンス、インスタレーションや長期展示プログラムなど、イベントが目白押しとなっております。
夏の暑さも落ち着いてくるこの9月の終わりに、アートを楽しむ夜のお散歩に出かけてみるのはいかがでしょうか。
4. 東京国立近代美術館「ハニワと土偶の近代」(2024年10月1日-12月22日)
右上画像:岡本太郎《犬の植木鉢》、1954年、滋賀県立陶芸の森陶芸館
右下画像:斎藤清《埴輪》、1953年、福島県立美術館/©Hisako Watanabe
出土遺物をテーマにした美術展、「ハニワと土偶の近代」展が2024年10月1日(火)より東京国立近代美術館にて開催されます。縄文時代の「土偶」、古墳時代の「ハニワ」と時代が錯誤しているこの展示タイトルに一見違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。実際にハニワや土偶などを展観するのではなく、近代以降の美術作品にモチーフとして登場する出土遺物のイメージを扱うものです。明治から現代まで、出土遺物に注がれた美的なまなざしを順に追っていくと、ハニワブームが先、その後に縄文ブームがやってくるという現象がみられることから、このような逆転したタイトルになっているようです。全4章で構成される展示では、明治時代前期の「好古家」と呼ばれる人たちの活躍までさかのぼり、昭和戦中期のハニワブーム、戦後の岡本太郎やイサム・ノグチといったアーティストによる出土遺物への再注目を検証し、「日本的なるもの」や「伝統」への探究が盛んに行われた時代のなかで「土」が持った意味や影響にも言及していきます。最後の章では締めくくりとして、1970年代以降、ハニワや土偶のイメージが大衆文化に波及する様を捉え、今日への繋がりを示します。
出土遺物と近代への繋がりを細かに追っていくこの展示は、自身の生活の意外な部分への繋がりを気づかせてくれるのかもしれません。
5. 東京オペラシティアートギャラリー「松谷武判 Takesada Matsutani」(2024年10月3日-12月17日)
右画像:パリ、バスティーユのアトリエにて制作中の松谷武判 2019 Photo: Michel Lunardelli
戦後を代表する美術運動の一つである「具体」での活動を経て、その後パリに渡り、世界を舞台に活躍し続ける松谷武判の作品200点以上が揃う大規模個展が東京オペラシティアートギャラリーにて「松谷武判 Takesada Matsutani」展が2024年10月3日(木)より開催されます。具体作家の第2世代として、当時の新素材であったビニール系接着剤(ボンド)を用いた作品は有機的なフォルムを纏ったレリーフ状の作品を生み出しました。それに続くパリ時代初期の作品としては、松谷が世界中のアーティストが集る版画工房「アトリエ17」に入門し、自身の制作活動を根底で導くモチーフに出会った頃の作品が出てきます。その他にも、制作活動のなかでも重要なポイントとなった、松谷の作品イメージとしても知られているであろう「黒」の世界が生まれるきっかけである、紙と鉛筆を使用し、制作行為の原点に戻りながら生み出した作品群も展示されます。その他、今まで公に出てこなかった希少な作品や未発表スケッチブックに描かれた日々のドローイング等、アーティストの制作背景を垣間見せるような展示となっております。
現在も活動を続ける日本の代表作家の一人である松谷の60年を超える制作活動の軌跡を一挙に見ることのできるこの貴重な機会をお見逃しなく。
6. 東京都写真美術館「アレック・ソス 部屋についての部屋」(2024年10月10日-2025年1月19日)
左画像:アレック・ソス《Anna, Kentfield, California》〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉より、 2017 年/東京都写真美術館蔵/ⓒAlec Soth
右上画像:アレック・ソス《Bil, Sandusky, Ohio》〈Songbook〉より、 2012 年/東京都写真美術館蔵/ⓒAlec Soth
右下画像:アレック・ソス《Still LifeⅡ》〈Advice for Young Artists〉より、2024 年/作家蔵/ⓒAlec Soth
国際的な写真家集団マグナム・フォトの正会員であるアレック・ソスの個展「アレック・ソス 部屋についての部屋」展が2024年10月10日(木)から東京都写真美術館にて開催されます。初期を代表するシリーズから最新作までの約60点を含むこの展覧会では、「部屋」をテーマに彼のこれまでの作品を編み直していきます。初期から彼はアメリカ国内を車で旅し、風景や出会った人々を大判カメラで撮影してきましたが、出品作品シリーズのひとつ《I Know How Furiously Your Heart is Beating》ではそうしたロードトリップのスタイルではなく、世界各地の様々な人々を訪ね、その人々が過ごす部屋でのポートレートや持ち物を撮影しています。彼の作品を「部屋」というテーマで読み解く展示は、初めての試みとなります。
作家自身が親しみを強く感じると語る室内での写真から、その空間に佇む人々に意識を向け、何が見えるのか、ぜひ体感してみてはいかがでしょうか。
7. SBIアートオークション「第68回SBIアートオークション|MODERN AND CONTEMPORARY ART」下見会&オークション(2024年10月23日-10月26日)
Courtesy of SBI Art Auction
SBIアートオークションは、2024年10月25日(金)、26日(土)に、代官山ヒルサイドフォーラムにて「第68回SBIアートオークション|MODERN ART CONTEMPORARY ART」を午後13時より開催いたします。2024年10月23日(水)からは同会場での下見会も開催されます。2024年最後のオークションとなり、10月初めに韓国・ソウルでの海外巡回下見会も開催される今回のセールでは、世代やジャンルを超え、アートマーケットの重層性を垣間見せる豊富な作品が揃いました。時代を牽引するアーティストとして国際的な人気を誇る草間彌生の人気シリーズのかぼちゃのキャンヴァス作品群に加え、彼女の作品の象徴的なモチーフである網を描いた《Infinity Nets》(1999年)も登場いたします。その一方で、麻布の裏面から油絵具を裏ごすことで新たな質感を生み出す「接合」シリーズにより物質性を追求した韓国の単色画運動を代表する作家・河鍾賢(ハ・ジョンヒョン)の長辺2m以上の超大型作品《接合 91 – 23/CONJUNCTION 91 – 23》が圧倒的な存在感を放ちます。7月セールでの緊張感ある入札競争が記憶に新しいもの派の関根伸夫の作品《空の台座》は、東京都庁ふれあいモールのパブリックアートとしても知られている同名の彫刻作品と同じモチーフを利用しています。そのほか欧米からは、ストリート、グラフィティ文化を起点に活動を始め、アメリカの抽象表現主義の流れを継承しているアーティストであるホセ・パルラや、多様なメディウムを使用し、アメリカの歴史、文学、社会などをテーマに制作、活動を進めているグレン・ライゴンなどのほか、ポップアートを代表するアンディ・ウォーホルのこれまた象徴ともいえる《Marilyn Monroe (F. & S. Ⅱ.26) 》は、淡い色彩にビビッドなピンクが彩りを放ちます。